COMNEXT(コムネクスト)次世代 通信技術&ソリューション展
2024/6/26(水)-28(金)
東京ビッグサイト 南展示棟

株式会社NTTドコモは、ミリ波の普及をめざしている。ミリ波とは波長が1~10mmで周波数が30~300GHzの周波数の電波をさすが、移動通信業界では一般的にミリ波という場合、世界的に割り当てが進んでいる26GHzや28GHz帯も含めた周波数の電波をさす。また周波数帯域幅の広さはデータ転送速度に比例する。5Gで割り当てられた3.7GHz及び4.5GHzの周波数帯域100MHz幅に比較し、ミリ波は4倍の400MHz幅である。これにより高速大容量な通信が可能となるといったメリットがある一方で、その普及にはさまざまな課題がある。メリットと課題について、株式会社NTTドコモCSOの中村武宏氏に聞いた(聞き手:今崎人実)


ミリ波のメリットについて教えていただけますか

【図】3つの広帯域な新周波数帯を利用したNTTドコモの「瞬速5G」(同社提供)

高速大容量を必要とするアプリケーションが増えており、今後もトラフィックの増加が想定されていることから、高速大容量通信が可能なミリ波が必要とされるのは明らかです。ミリ波を使用することで、高品質な映像を転送でき、低遅延化も図ることが可能です。遠隔操作やIoTでの低遅延サービスの提供ができるため、さまざまな用途で期待されています。

例えば、現在は、Wi-Fiを利用し遠隔操作や遠隔監視をしている工場もありますが、その安定性や性能が課題になっています。5Gのミリ波を用いることで、工場内で機器をより安定してセキュアに監視、制御することが可能となり、工場の効率化を促進できます。

また、遠隔医療にもミリ波は応用可能です。医療には高精細かつ高速な映像が必要になります。例えば救急車で患者が運ばれる場合、病院に到着する前に患者のデータを送ることで、病院は迅速な対応が可能です。また、適切な搬送先選定が可能となり、搬送先のミスマッチによる治療の弊害を解消もできます。さらには、病院の医師の指示に従い、救急車内で症状に応じた最適な救命処置もできます。そういった点からもミリ波は期待されています。当社で現在提供している「瞬速5G」においても28GHz帯のミリ波を使っています。


ミリ波のニーズはどこにありますか?

【図】高速・大容量を実現する5G新周波数帯(同社提供)

電波には、高い周波数帯であるほど飛ぶ距離が短くなるという性質があり、また遮蔽物があると直進し回り込まないため、電波が途切れてしまうこともあります。一方で、広い帯域幅を確保できるミリ波は、高速大容量の通信が実現できる点が大きな特徴です。
そのため、狭いエリアにおいて高速大容量が必要となるような、密集した場所や通信機器が多い場所に向いています。また、電波が飛ばないという性質は、電波が漏れてしまうとセキュリティ上問題がある工場や病院などにミリ波は最適です。閉域で利用するローカル5Gもミリ波と相性がいいといえるでしょう。また人が密集するスタジアムや駅前、イベント会場での利用にも適しています。


ミリ波の課題はどんなことでしょうか?

現在、ミリ波には4つの課題があります。(1)対応エリアが少ない(2)対応基地局装置が少ない(3)ミリ波対応の端末が少ない(4)ユースケースが揃っていない。これらは独立した課題ではなく相互に関係し、ある意味負のサイクルを形成してミリ波の普及が進まない状況になっています。
当社としてもエリア拡大が課題だと感じています。ただしミリ波は全国を一律でカバーするといった性質のものではないため、必要な場所から普及していきたいと思っています。それを通じてミリ波対応の基地局や端末の普及も図れればと考えています。また、ミリ波を必要とするアプリケーションやユースケースの開発も必要です。今後、ミリ波対応エリアや端末が増えることで、費用も下がり、ユースケースも開発され、さらにエリアを広げることができます。負のスパイラルから正のスパイラルに変えることが必要と考えています。
これには多くの関連するステークホルダの方々との協力が必須であるため、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)に「ミリ波普及推進アドホック」を今年1月に発足しました。アドホックメンバーの皆様の積極的な寄与もあり、3月には白書第一版を公開しました。今後、本白書を活用してミリ波の有効性をさまざまな業界の方々に訴求しつつユースケースを創出し、ミリ波の普及を促進していきたいと思っています。

【図】高速・大容量を実現する5G新周波数帯(同社提供)


ミリ波の今後の展開について教えてください

当社は「株式会社NTTコノキュー」というXR関係のビジネスをやっていく会社を立ち上げました。コノキューでは法人や個人のお客さま向けにリッチなXRコンテンツの提供を拡大していく予定です。既に展開済みのエンタープライズ向けソリューションだけでなく、いろいろなソリューションにおいて、5Gやミリ波の良さを引き出していけるのではないかと期待しています。

これまで、通信の発達により新たな産業が生まれてきました。いまも、現実の世界から収集した、さまざまなデータを、コンピュータ上で再現するデジタルツインといった技術により、現実社会のものがバーチャル空間において、分析され、リアルの世界に最適な結果を導くようなサイバーフィジカル融合が現実となってきています。そうした技術の利用が多くなると、データ量が飛躍的に増えます。現在は6Gの議論が始まっていますが、そうした状況に対応するため、通信の性能を上げていかなくてはならないと思っています。


展示会への出展にあたり、期待することはどんなことでしょうか?

展示会出展の目的はミリ波の普及です。ミリ波の良さは体験していただかないとわからないこともあると思います。「ミリ波がどれぐらい性能の面で優れているのか」「ユースケースとしてどのように利用できるのか」などミリ波の良さを体験していただければと思っています。今回のブースでは、ミリ波で高品質な8K映像の大容量伝送の体験が可能です。工場や病院関連業界の方だけではなく、多くのエキスパートやネットワーク技術者の方にミリ波を体験していただけたらと思っています。エキスパートの方に紹介したいのがミリ波でエリアを拡張できる、安く簡単にできるなどのソリューションです。お互いにWin-Winの関係を築けるビジネスパートナーに出会えることを期待しています。